極上の展覧会、のような・・・
レビュー日:2004-04-02 評価:★★★★★
これは、著者が前書きで断っているように、主に中米でのチョコレート文化史である。第一章から十章までカカオの考察に費やされている。著者は、植物としてのカカオから、飲み物やお金、それに薬として使われるカカオだけでなく、その儀礼的・言語的側面に至るまで、マヤ人の残した文献などをふんだんに盛り込みながら扱っている。この本は、おしゃれなイラストやショップ、それにモダンなデザートのレシピなどを期待する人には残念ながら向いてないだろう。しかし、なぜ今でも人はチョコレートにこんなに惹きつけられるのかということに興味の有る人にはお薦めの一冊である。カカオはもともと王侯や戦士のための飲み物であり、精力剤としても飲まれていたとか、さらには、虫に刺されたときには熱いチョコラテに人糞を入れてかき混ぜて飲んでいた(!)という話まで、思いもしないような話がごろごろと出てくる。わが国の誇る国立民族学博物館の貴重な資料を見る機会はそうそうないが、この本では、16世紀初頭にカカオの木の絵を残したオビエド・イ・バルデスの本に始まり、1877年に日本で始めてチョコレートを商品として加工し販売した東京両国の米津風月堂の新聞広告に至るまで、民博所蔵の貴重書・図版オンパレードである。少々専門的になりすぎていて一般読者には少し難しい嫌いもあるが、それでもこの本は、一流のキュレーターの手になるカカオの大展示会を五時間位かけて歩き回ったあとのような充実感と満足感を読後に与えてくれる。